製薬会社からマネーをもらった医師は勤務先の病院のホームページに謝礼の金額と氏名、診療科名、製薬会社の製品名を掲載してほしいです。
製薬会社も営業活動が行き過ぎると処方誘導になりかねません。!
以下、ご覧ください。
医療用医薬品の販売、医師抱き込み 一部理事に謝礼集中
国内の主要医学会の理事らに製薬会社が提供した講演料などの謝金が、薬の販売に影響力のある学会の理事に集中して提供されていた。高い中立性が求められる学会理事だけに、処方にゆがみが生じないか懸念されるが、学会は受け取り状況を自ら開示せず不透明なままだ。
製薬会社が国内の医学会理事らに支払う講演料や原稿執筆料などの講師謝金は、名目上は講演などへの対価に相当し、それ自体に違法性はない。寄付金などと同じく製薬会社から提供された資金の一種だが、研究室ではなく医師個人への報酬という特徴がある。そこから、製薬会社が薬の売り上げ増を期待し、学会理事らへの接近を図る狙いがみえてくる。
医学会理事らは、診療指針として何を採用すべきか検討する重要な地位にある。採用されるかどうかで医療現場での薬の使われ方が大きく変わってくる。大手製薬会社のある関係者がその内実を明かした。
この関係者は数年前、自社のC型肝炎治療薬を巡って、日本肝臓学会のある元理事の「抱き込み」役を担当した。元理事は診療指針の作成委員で、「うるさ型」で鳴らしていた。どんなにいい薬であっても、指針に新薬が採用されなければ、薬が広く患者に使われることはない。つぎ込んできた多額の研究開発費は水泡に帰す恐れすらあった。
同社は、この元理事を頻繁に講師として招き、多額の謝礼を支払った。ある時は東京都内の高級ホテルで、肝炎治療の最新状況について診療に携わる医師を前に1時間講演してもらった。謝礼は約15万円。関係者は「彼にそっぽを向かれたらおしまいだった」と振り返る。
、C型肝炎治療薬については、他社が新薬を2年後に発売する見通しがあった。関係者は「それまでに売りまくってしまわないと、つぎ込んだ多大な研究開発費を回収できないという焦りがあった」と振り返る。指針にはこの会社の治療薬のことが発売より先に「無事」掲載されたという。
この元理事は取材に、「いい薬を広めようと講演するのは責められることではないはず。製薬会社からの講演料など提供された資金は正当な対価だ」と答えた。
製薬会社から提供された資金を巡っては、受け取った側の判断に何らかのバイアス(偏り)が生じる危険性があることが指摘されている。日本医学会の利益相反委員会も2017年に、一定額以上の講演料や原稿執筆料などを受け取った場合、指針策定の議決権を原則持たせないよう決めることが適切であるとするガイダンスを各医学会に示している。
元薬害HIV被害者でNPO法人「ネットワーク 医療と人権」の花井十伍理事は「人は手心を加えるという感覚のないうちに、お金をくれる人に気を使ってしまう」と指摘した。
製薬業界の内幕を暴いた著書「ビッグ・ファーマ」の共同翻訳者で、医師と製薬会社を巡る資金について詳しい斉尾武郎医師も「本業以外に製薬会社からの収入が相当額に上ること自体、モラルに反している。資金提供を受けた医師は学会の理事などになるべきではない」と批判する。
◇有力者の宣伝力期待
製薬会社が学会理事に多額の講演料などを提供するのには他の狙いもある。
学会理事は、その医学分野のリーダー的存在であり、製薬会社の薬の販売促進に大きな影響を与えるため、「キー・オピニオン・リーダー」(KOL)と呼ばれる。製薬会社からの講演料や原稿執筆料など講師謝金は、KOLによる薬の「宣伝力」を期待しているとの指摘もある。
仙台厚生病院などの調査からも、そのことがうかがえる。
薬の処方とより関係の深い日本内科学会や日本泌尿器科学会、日本皮膚科学会など内科系の学会の理事には多くの資金が提供された一方、日本形成外科学会や日本臨床検査医学会など薬の処方とあまり関係が深くなさそうな外科系やそれ以外の学会では提供される資金が少ない傾向がみてとれるからだ。
過去にも、降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)の臨床試験のデータ不正事件を巡り、製造元の製薬会社が社内資料に「KOLといわれる学会の指導的立場にある医師との関係が強くなく、こうした先生方との早急な関係強化が(年間売上高)1000億円達成のひとつの鍵」と明記。学会の理事らに多額の資金を提供して講演会や医学雑誌の座談会を開き、バルサルタンを大々的に宣伝して売り上げを伸ばした経緯がある。
◇学会公表せず
新薬の開発や医学研究は、製薬会社から提供された資金で成り立っているのも事実だ。
主要19医学会のうちで最も「集金力」のあった日本内科学会(会員約11万人)。理事長の矢冨裕・東京大教授は取材に対し、「産業界との連携は避けられない流れだ」と語る。学会理事には製薬会社と協力して業績を上げた医師が推挙されることが多い。そのため学会理事は、結果として診療指針に関わることが多いのだという。
産学が連携しつつ、癒着を生まない方策の一つとして、資金提供の透明化がある。
業界団体「日本製薬工業協会」は医師への資金提供について、透明性ガイドラインを定めて13年度から自主的に毎年公表している。
ただし、個々の医師について一括して製薬会社から受け取った講演料や原稿執筆料などの資金を検索・表示する機能はなく、その「透明度」は依然として低いままだ。また、製薬協に加盟せず、謝礼の支払い状況を公表していない外資系企業もある。
日本内科学会など主要学会は、会員医師の資金の受け取り状況について、自ら公表していない。医師個人に支払われた資金については、NGO「ワセダクロニクル」と、NPO法人「医療ガバナンス研究所」が共同出資して作成したデータベース(http://db.wasedachronicle.org/)に頼るしかないのが実情だ。