三好市祖谷地方を舞台にした映画「祖谷物語」で監督を務めた同市出身の蔦哲一朗さん(28)=東京都中野区=が、池田高校野球部の監督として3度甲子園を制した祖父の故蔦文也さんの人生を記録するドキュメンタリー作品を製作している。早ければ4月末ごろに完成させ、年内には主に県内で要望に応じて上映会を行う。

 http://www.topics.or.jp/localNews/news/2015/11/2015_14478950287334.html

 撮影は2011年初めから映画製作の合間を縫って進めており、これまでに家族や教え子ら約20人にインタビュー。50時間前後に及ぶ映像をカメラに収めた。タイトルは未定。

 取材では、熱心な指導で甲子園優勝チームを育てた輝かしい足跡が浮かび上がる一方、「成功した後は以前ほど生徒を指導しなくなった」と指摘する声も一部にあった。作品ではそうした負の部分も織り交ぜ、「生身の蔦文也」を伝えられる作品を目指すという。

 蔦文也氏は、池田高校野球部を率いて1982年夏、83年春、86年春の3度全国制覇を達成。「攻めだるま」と称された攻撃野球で全国の高校野球ファンを魅了し、池田高校の名前を各地にとどろかせた。

 哲一朗さんは大学進学を機に上京して映画監督を志した。子どもの頃に祖父と過ごした記憶は少ないが、2001年の告別式の際、全国から千人もの参列者が集まった光景を目にし、「祖父の偉大さ」を実感。東京で映画監督を目指して悪戦苦闘する中で自信を失いかけることも多かったが、「じいちゃんができたなら自分にも何かできる」と踏ん張れたという。

 10年秋、祖谷物語の製作を計画していた際に、地元住民から祖父の作品も撮ってほしいとの要望が寄せられ、哲一朗さん自身も「今、話を聞かないと関係者がいなくなってしまう」と考え、撮影を決意した。

 今後、数人のインタビューを行い、編集作業に入る。哲一朗さんは「できるだけ客観的に祖父を描いた作品に仕上げたい」と話している。
【写真説明】故蔦文也監督の妻で祖母のキミ子さん(左)にインタビューする哲一朗さん=三好市池田町マチ

蔦キミ子

蔦文也