機能分化や地域連携を推進するために、大学病院をはじめとする急性期病院に対して紹介患者の受け入れや逆紹介が促されています。
また、急性期病院の外来患者を抑制する施策の導入が進み、病院の医業収益に影響を与えるようになっていることから、先生方の下にも病院の経営部門から紹介率の向上や地域連携への積極的な取り組みを求める声が届いているのではないでしょうか。

今回は、外来診療に対する医療政策の背景や目的と現状について紹介します。 

大学病院や急性期病院を軽症患者が多数受診することにより、外来の待ち時間が長くなったり入院病床が不足したりするなど、本来、急性期病院で治療する必要がある重症患者への医療提供が困難になるとともに、業務負担の増加による医師の疲弊が問題になっています。

こうした問題を解決し限りある医療資源を有効活用するために、重症や緊急性の高い患者の治療は大学病院をはじめとする急性期病院が担い、中・小病院や診療所はかかりつけ医機能を担うと同時に高度な治療が必要な患者を急性期病院に紹介する一方で、急性期を脱した患者に対する治療継続の受け皿となることを目指した医療政策が施されています。 

外来診療においては、一般病床200床以上の病院を対象に、一部の検査や処置の費用を包括することで採算性を低下させ、病院が患者に対して地域の医療機関を受診するよう促すことを期待した再診時の費用「外来診療料」が導入されています。また、紹介状を持たない初診や、逆紹介後も病院を受診する患者の負担額を増やすことで患者自らが急性期病院の受診を控えることを狙った特別料金の徴収を認める制度などがあります。

しかし、患者の根強い大病院志向に加え、外来診療料の導入によって再診時の自己負担額は大病院の方が割安になり、かえって受診を促すことになったり、特別料金制度が任意であることから徴収する病院が一部にとどまるなど、期待通りの効果が得られませんでした。

そのため、前々回(2012年度)の診療報酬改定では、特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院を対象に、紹介率・逆紹介率が低い場合に初診料と外来診療料を減算するルールが設けられました。また、前回(2014年度)の診療報酬改定では、紹介率・逆紹介率の基準引き上げの他、許可病床500床以上の病院(一般病床200床未満病院を除く)も対象に加えるといった見直しを20154月分のレセプトから開始する(1年間は経過措置期間)とされるなど、診療報酬改定のたびに外来抑制策が拡大されています。

さらに2016年度からは、大病院を受診する患者から一定額(金額は未定)の自己負担徴収が義務化される予定です。 

このように、大学病院をはじめとした急性期病院の外来患者抑制策は今後もより一層の強化が見込まれることから、急性期病院の医師には、地域の医療機関に対して積極的に逆紹介を行うと同時に、高度な医療を必要としない外来患者に対してかかりつけ医の受診を促すことが求められます。
また、軽症患者の受け入れ施設の医師との協力体制を構築するなど、地域連携に取り組むことが病院経営上も重要になっているのです。