全国保険医団体連合会はH28年3月31日に開催したマスコミ懇談会で、5年ぶりとなる受診実態全国調査の第1次集計を発表。
4割の病医院で経済的理由による受診抑制があったとし、住江憲勇会長は「忸怩たる思いでこのデータを見ている。
さらなる患者負担の増加は容認できない」と訴えた。

 
調査は全国の保険医協会、医会の会員8万645の医療機関(医科、歯科)を対象に2015年12月から2016年1月にかけて実施(一部、2月から3月)。
第1次集計では2月末までに集まった1万1984施設(回収率14.8%)の回答を分析。最終結果は2016年夏ごろになる見込み。

 
経済的理由と思われる受診中断事例の有無については、「あった」が40.9%(2010年38.7%)、「なかった」が27.6%(同34.2%)、「分からない」が30.4%(同26.4%)となった。
2010年と比較すると「あった」はほぼ横ばいだが、「なかった」が6ポイント減少する一方で、「分からない」が4ポイント上昇しており、判断に迷う事例が増えていることが分かった。

 
一方で、小児科では「あった」が7.8%にとどまり、全国で小児の医療費助成制度の拡充が進んでいる効果が示された(2010年は診療科別の集計はしていない)。

 この半年間で遭遇した事例を尋ねたところ、最多が「薬が切れているはずなのに受診に来ない」(67.1%)で、「受診回数を減らす要望」(60.8%)、「薬代を減らす要望(ジェネリック希望等)」(60.3%)と続いた(複数回答)。

 
75歳以上の患者窓口負担の2割への引き上げについては、73.0%が「受診抑制につながる」と回答した。
自由記述欄を分析した結果として、是非については「反対意見が多数を占める一方で、『やむを得ない』との意見も一定数見られる。
しかし、『高所得者に限る』など条件付きの意見が多い」と説明した。

 
保団連監査の竹崎三立氏が自身の診療所の患者を分析したところ、患者一人当たりの1カ月間での受診回数は2008年の1.98回から2015年には1.3回に減少していたと報告。
「長期処方希望と薬の飲み伸ばしによる自己防衛が進んでいる」と指摘した。
また、非正規社員の増加を背景に、若年層で健康診断を受けていない割合も増えているという。

 
住江会長は「自由記述で、労働環境の悪化が現役世代の受診困難につながっているという指摘が出ているのが今回の調査の特徴。
将来的な健康格差につながる」と指摘。
高額療養制度の改正や75歳以上の窓口負担2割化などのさらなる患者負担の増加は容認できないと訴えた。
また、薬剤費の増加を抑えて、診療報酬本体に回すべきと主張した。