2016年度の診療報酬改定により、保険薬局、いわゆる病院のすぐ近くにある門前薬局や街中の薬局薬店が大きな影響を受ける。特に問題なのは『かかりつけ薬剤師制度』の新設だ。
 「同制度の基本的な考え方は、薬という対物業務よりも患者への服薬指導という対人業務を評価(高点数の診療報酬)するところにあります。要件には『24時間365日電話相談の受付』や『患者から指名してもらうこと』などがあり、一定の経験を持つ薬剤師が、複数の病院などから処方されている薬をすべて把握した上で薬剤指導を行い、その結果を処方した医師に報告し、かつ処方の提案も行います」(医療ジャーナリスト)

 患者にとっては歓迎すべき制度と思えるが、損保会社の事故対応じゃあるまいし“24時間365日対応”など街中の薬局では継続は不可能だろう。まして“指名”でカネまでかかるとは…。
 「すでに反面教師が存在します。'12年4月、診療所に“かかりつけ医”の役割を担わせるべく24時間365日患者からの電話による問い合わせに対応する体制を敷き、5点(50円)の加算が算定できるという『時間外対応加算制度』が始まりました。しかし、今どき子供でも50円でお使いはしない。医師が50円で24時間対応する制度が持続するはずがなかった。この制度に従っている診療所は全国10万軒のうち、わずか152軒にすぎません('15年度のデータ)」(同)

 ところが、今回の『かかりつけ薬剤師制度』には、これまでになかった懲罰的な規定も盛り込まれている。
 「'17年4月1日から“かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務を1年実施していない保険薬局”には、調剤基本料の50%の額しか算定できなくなるのです。難関資格の薬剤師も『ついにブラック化か』と自虐する人もいます」(同)
 大企業はともかく、個人店舗や小規模薬局を“いたぶる制度”がうまくいくはずはない。