年金カット
約7割の65病院は15年度より経常収支が悪化していた。
機構は、国の医療政策や地域医療の向上に貢献することを目的に、04年に設立され、国立病院・療養所の大半の経営を国から引き継いだ。
ただ、全体の経常収支比率は10年度の107%をピークに悪化に転じ、診療報酬改定や消費増税の影響などから16年度は99・2%(経常収支は68億円のマイナス)と設立以来初めて経常赤字を記録。
17年度も99・7%(同21億円のマイナス)で2年連続の赤字となった。
検査院は、機構の財務状況や各病院の経営改善に向けた取り組みを調査。その結果、国公立や医療法人などの他の病院に比べ、支出に占める医薬品や医療器具などの購入にかかる材料費の割合が高く、一貫して上昇傾向にあった。
収入の大部分を占める一般大規模病院では、病床利用率が低下していた。
各病院は、資金余力に不足が見込まれる場合、機構の通知に基づき経営改善計画を作成し、実行することになっている。
しかし、16年度決算では、15年度より経営が改善されたのは27病院にとどまった。
各病院が経営改善計画で掲げた実施項目は「収益の増加」が89%を占め、その内容は「患者数を増加させる」が大半だった。
実現可能性や医療需要などを加味しないまま、患者数の増加を安易に盛り込んだことで、計画を達成できなかった病院が多かったとみられる。
検査院は「実現可能性や妥当性に疑念が生じる内容では実行の意欲に欠け、経営改善に結びつかない恐れがある」と指摘した。
機構は「参考となる実施項目の事例や注意点を具体的に示し、改善計画の実現可能性を高めたい」としている。
人々が安心して暮らせる手立ては用意されているのでしょうか。
「毎月やりくりしても赤字が出ちゃう…」
埼玉県の女性(77)が、通帳とにらめっこしながらため息をついた。
10年前には100万円以上あった貯金は、すでに10万円を切っている。
40代で会社員の夫と別れ、子連れで住み込みの寮母などをして息子2人を育てた。
清掃員をしていた70歳のとき、高齢を理由に仕事を辞めさせられた。
その後は探しても職がなく、年金頼みの暮らしになった。
女性は厚生年金の加入期間もあり、もらえる年金は1カ月で9万円ほど。うち半分は、一人で住むアパートの家賃にあてる。
電話代や光熱費などで計1万円強。
食費を切りつめても、長年かけてためたお金が目減りしていく。
息子たちが月2万円ずつ援助してくれると言うが、もらえない月もある。
それぞれの生活で大変なことを思うと、催促はできない。
年金収入だけでは、生活保護の基準を下回っている。
だが、「保護の申請は気持ちの踏ん切りがつかない」と言う。
「生活保護は本来、障害や病気に悩む人のための制度だと思う。
昔から健康に働き、子どもを育ててきたプライドがある。
なんとかやり繰りしなければ」できる限りの節約が続く。
テレビは、地上デジタル放送への対応機が必要になったとき見るのをやめた。
新聞購読もやめ、近くに住む妹からもらって数日分を読む。
老眼鏡のレンズの度が合わなくなったが、がまんしている。
2013年秋から、過去の物価下落時に据え置いた分の年金の減額が行われた。
「もうこれ以上、どうすればいいの」。
女性は、減額分の給付を求める集団訴訟に原告の1人として加わっている。
国民年金は満額でもらっても6万円台に過ぎない。
多くの高齢者が、埼玉県の女性に輪をかけた低年金に苦しんでいる。
一方、生活保護を受ける65歳以上の高齢者世帯は約80万。
低年金でも、生活保護で補えていない人たちがいる。
主な理由は、「最後のセーフティーネット」とされている生活保護の受給条件の厳しさだ。
地域や年齢で決まる「最低生活費」の1カ月分が、収入や貯金などで賄えないと判断された場合、保護が支給される。
自家用車を持つことも原則として認められていない。
きょうだいや子どもに支援できる人がいないかもチェックされる。
生活保護への世間の偏見から、申請をためらう人もいる。
from朝日新聞デジタル
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